『任意後見サービス』および『見守りを始めとした付随サービス』についてご説明します。
①継続的見守りサービス
定期的な訪問や電話連絡などにより、ご本人様のご様子を継続して見守ります。いつからご本人様の判断能力が衰えはじめたかを確認するための重要なサービスとなります。この契約によって、毎月1回の訪問などでご本人様の健康状態などを見守ることが可能となります。
任意後見サービスは、判断能力を失い後見監督人が選任されて契約が発効します。しかし、判断能力は徐々に衰退することが多いことから、『おひとり様』の方などは元気な時から見守り、適切なタイミングで後見監督人の申立手続きをする人を決めておく必要があります。
②財産管理等委任サービス
金融機関とのやり取りなど、財産管理に関する特定の法律行為を委任します。委任契約であり、その内容はご本人様の意思で自由に定めることができます。寝たきりの方など、身体が不自由で自ら財産管理ができない方などに効果的なサービスです。サービスの契約と同時に効力を発生させる場合と、身体が不自由になった場合にご本人様の意思で効力を発生させる場合とをお選びいただけます。
身体能力が衰退すると、ひとりでは日常の金銭管理をはじめ財産管理にも支障をきたすことが増えると考えられます。その際の支援を行う契約で、管理事項を個別に定めて対応していきます。
③任意後見サービス
後見サービスのメインとなるもので、公正証書での契約締結が必要となります。
判断能力が低下したタイミングで任意後見監督人の選任申立を行い、後見監督人が選任されることで任意後見契約の効力が発生します。判断能力のあるうちに任意後見サービスの契約を結び、判断能力が低下したときに契約で定めた財産管理や身上保護に関する法律行為をご本人様に代わって行います。
・財産管理
ご本人様の資産や負債および収支の内容を把握し、ご本人様のために必要かつ相当な支出を計画的に行いつつ、資産を維持します。
- 不動産などの財産の管理、保存、処分
- 銀行など金融機関との取引
- 収入(年金、給与、預貯金、生命保険など)、支出(公共料金、住宅ローン、税金、保険料など)の管理
- 遺産相続、各種行政上の手続き
- 権利証や通帳などの証書類の補完
・身上保護
介護契約や施設入所など、ご本人様の世話や療養保護に関する支援を行います。
【含まれるもの】
- ご本人様の住居の確保に関する契約手続き、費用の支払い
- 病院受診、治療、入院に対する契約締結、費用の支払いや医師から治療法などの説明を受ける際の同席
- 老人ホームなどの施設の入退所、介護サービス等に関するご本人様との話し合い、情報収集、契約締結、費用の支払い、施設や介護サービスにおける処遇の監視と異議申し立て
- 介護保険などの社会保障給付の利用手続き
- 教育やリハビリテーションに関する契約締結、費用の支払い
【含まれないもの】
- 日用品や食料品の買い物、食事の支度や部屋の片づけ、身体介護
- マンション・アパートの賃貸契約の保証人
- 入院や施設入所の際の身元保証人、身元引受人
- 病気やけがの治療や手術、臓器提供についての同意
- ご本人様の本質的意思が必要な権利(遺言、養子縁組、結婚、離婚など)
※取消権について、法定後見には取消権がありますが、任意後見人にはありません。ご本人様の判断能力があるうちに契約した事項を、契約発効後は代理権によって忠実に実行することが求められます。取消権を行使することはご本人様の意思に反することとなり、任意後見契約違反になる場合があります。
※身元引受保証について、老人ホームなどの介護施設に入所する際や、病院に入院する際に、身元引受保証を求められる場合がございます。身元引受保証を依頼できるご家族がいない、いても依頼したくないなどの理由により第三者に保証を依頼したいとのご希望がある場合がございますが、成年後見人は保証行為が認められていません。増江治療院では、任意後見サービス契約を締結した方に対し、任意後見受任者として施設入所契約書等への調印に対応します。
④遺言
遺産の分配方法の指定など、死亡によって法律的な効果を生じさせる意思表示を遺言と言います。法律で定められた様式で作成する必要があり、自筆証書遺言や公正証書遺言などの方法があります。
・遺言の必要性
遺言がない相続の場合、相続人全員が合意した『遺産分割協議書』を作成することになります。
- 相続人が多数のため、事務負担が大きい場合
- 兄弟姉妹が亡くなって代襲相続により甥姪が法定相続人となっているが、日頃接点がほとんどない場合
- 法定相続人が海外居住などの理由により、連絡等に多大な負担がかかる場合
このようなケースでは、遺言により相続人の事務手続きの手間を避けることができます。法定相続人以外のお世話になった方に財産を譲りたい場合は遺言が必要となり、公益団体や母校などに財産を譲りたい場合は遺言により可能となります。なお、法定相続人がいない場合は、財産は国庫に帰属します。
・自筆証書遺言および公正証書遺言の作成支援
『自筆証書遺言』は全文を本人が手書し、押印する必要があると民法で規定しています。本人の真意に基づいたものであることを担保するためですが、相続人や相続財産が多い場合は長文となり、作成時の負担が重くなります。また、日付や押印に不備があった場合は無効になるなどのリスクもはらんでいます。今後パソコンでの作成も解禁される可能性がありますが、自分の意思を確実に残すため、遺言内容の希望を取りまとめる支援を行います。遺言書を法務局で保管する『遺言書保管制度』も利用可能です。
また、遺言の遺言の隠蔽、紛失の恐れがなく、より確実に自分の意思が残せる『公正証書遺言』をご希望の場合は、遺言内容の希望を取りまとめ、公証役場との打ち合わせを支援します。この場合、公証役場に支払う公正証書作成費用が必要になります。
なお、遺言を確実に実施するために『遺言執行者』を指定しますが、任せる人がいない場合は増江治療院を遺言執行者にすることも可能です。
- 非弁行為について
増江治療院で行う後見サービス及び付随する業務について、弁護士法第72条に抵触する法律事件は行なわないことをお伝えします。
弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
同法に基づき、増江治療院では相続人間で既に紛争性を帯びている、また帯びる可能性が高いケースは受任しないことをお伝えします。また、他の相続人と代理交渉なども行いませんので、紛争解決が必要となる場合は弁護士におつなぎします。遺言書作成支援はご本人様のご意思を実現する権利義務関係に関する事項であり、基本的にはお引き受け可能です。
⑤尊厳死宣言書
治る見込みのない病気にかかり死期が迫ったときに、より自然な死をご本人様自身で選択したいと希望する場合、延命目的の過度な治療行為を行わないようにご家族様や担当医師に意思表示するための宣言書をご本人様とともに作成します。
医療現場では生存可能性がある限り医療を行うことが求められており、法制上も尊厳死は認められていません。しかし、意思表示を明確に行うことで、自分の希望を伝えることが可能となります。
⑥死後事務委任サービス
死亡後、葬儀や納骨、埋葬、未払い債務の支払いなどを委任するサービスです。死後の手続きを頼めるご家族がいない方などに有効なサービスです。
自分の死後の葬儀、埋葬、その他の手続きなどは、成年後見制度の後見人や遺言執行者は対応できず、その手続きを行う人が必要となります。ご家族などに任せられる場合は問題ありませんが、いない場合は事前に決めておく必要があります。そこで、対応する人と死後事務委任サービスの契約を締結し、死後事務の内容および費用を決めて安心して任せることが出来る人に委任します。
後見サービスの組み合わせ方
任意後見サービスは、メインとなる『③任意後見サービス』とそれを補うサービスの組み合わせ方により、【将来型】【移行型】【即効型】の三種類に分けられます。
健康状態 | 健康 | 身体機能 低下 | 認知機能 低下 | 死期が迫る | 死亡 |
①継続的見守り サービス | 契約・開始 | 終了 | |||
②財産管理等 委任サービス | 契約 | 開始 | 終了 | ||
③任意後見 サービス | 契約 | 開始 | 終了 | ||
④遺言 | 契約・作成 | 執行 | |||
⑤尊厳死宣言書 | 契約・作成 | 意思表示 | |||
⑥死後事務委任 サービス | 契約 | 実施 |
【将来型プラン】①(+②)+③(+④+⑤+⑥)
…今はまだ元気。将来判断能力が低下してからの支援が欲しい。
【移行型プラン】(①+)②+③(+④+⑤+⑥)
…困り始めている。判断能力が低下する前からの支援が欲しい。
【即効型プラン】③(+④+⑤+⑥)
…すでに判断能力が衰えてきている。すぐに支援が必要。